ボクの事務所は約8畳のアパート一階。家賃3万8千円。だったか。机とパソコン台、知人から借りている応接セット。
隣の部屋は、大震災前までは「金貸し」だった。当座のカネの融通がつかない人を相手にしたような。
災後、しばらくして商号が替わった。除染業者になった。そこそこの人数を抱え、夕方には作業を終えた人達が“日当”を受け取りにゾロゾロ。
郡山では「たいしたことない」除染が日々行われている。手作業の、いわば庭仕事のような光景をあちこちで見かける。
「除染がまだ来ない」と言って怒る人あり。「意味がないと」無関心の人あり。
この中途半端な被災地の、ボクの周りにある除染の光景。
安心材料としての除染ということかとも。場所によってばらつきがあるが、今の郡山の空間線量で、除染効果ってどれくらいあるのか。健康にどういう影響を与えるのか。
誰も「わからない」。
汚染されたところであることは間違いない。その放射性物質の汚染の影響よりも”怖い“のが、心の汚染。
危険感を伴う不安を抱えている人達には、危険をアナウンスする情報が正しい情報として、自分の不安感の裏打ちとして簡単に受け入れらる。
告訴騒ぎになった週刊誌の記事を含め、そう、まったく無責任な週刊誌の、売れればいいという姿勢の中での「与太記事」。それも立派な情報になっていく。
ネットに依存する。危険を言う人達、多くは、その発信元は”部外者“であると思うけど、匿名のブログで言いたい放題。しかもそのブログたるや、しっかり体裁が整えられている。
新聞記事を「誤用」し、曲解し、真実は書かれていないと一刀両断。どっかの大学教授をいまさら引き合いの出すのもばかばかしいが、信奉者まで現れる。
そんなブログには、必ず載っている写真。例の写真。大熊町で、役場OBたちが大熊の田んぼで、試験栽培、移行係数を調べるための作付。防護服を着て作付、農作業をしている写真が張り付いていて。
防護服を着てコメを作るなんて、福島の農家は殺人者だと来る。
やってられないぜ。それがネットに“拡散”されている様を見てると。
ICRPの言う「1ミリシーベルト」が定見となってしまった。100ベクレルが「正しい」基準値になってしまった。
「今すぐ1ミリシーベルト」。それが除染の基準になってしまった。IAEAの調査団が来日して、1ミリシーベルトは長期目標、1ミリと100ミリの間をどうするかは、住民合意や政府が決めること、って言えば、「話が違う」という騒ぎになる。
「心の汚染」が判断基準になる。「心の除染」をしなければ、とてもじゃないが、普通の福島県人はやってられない。
プロメテウスの罠にはまり、あげく、シーベルト、ベクレルの罠にはまってしまったような。
リテラシー能力の問題だと思うんだけどな。
米一つとってみれば「全袋検査」が行われている。基準値を超えたコメも見つかる。例えば100袋中3件といった割合で。そのコメは当然出荷されない。農家は作付禁止にされる。リスク犯してまで、汚染米を作るバカはいないはず。
汚染水の流出問題は、きょうの話には介在してない。別問題だとお断りを。
きのう書いた天野祐吉さんのこと。CM天気図で6月に亡くなった、なだいなださんのことを書いていた。
「強い国より賢い国を目指すべき」という言葉を引いて。
こと放射能問題については、福島県民は「賢い県民」になってくれればいいなと思うんだけど。
風評被害と情報の問題。あらためて考え直さねば。
2013年10月22日火曜日
“チェルノブイリ”異聞
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