郡山に郷さくら美術館という日本画の作品を収蔵した美術館がある。展示室から展示室に移動する廊下に青銅で作ったオブジェのようなものが3点展示されている。作品は非常に抽象的だが、動物や貝類などの生き物を積み上げてのものだという。その「価値」は理解できる目はないが、その題名にひかれた。
「破壊」、「独裁」、「輪廻」と名付けられている。福島県三春町の遠藤裕さんという人が2006年に完成させたものだとか。
おもわず、「最近の作品ですか」とたずねてしまうくらいに。
一昨年、この国は破壊されたと思う。津波は三陸の地を破壊した。原発は破壊した。物理的なこととして。
そして、破壊された原発は、すなわち、この国を構築してきた社会システムをも破壊したのじゃないかと。電気と言うエネルギーに頼り切っていた国の在り様を。
その破壊された原発を持ち、生活を破壊させられた多くの人がいることを知りながら、他国に原発を輸出しようとする指導者。
原発輸出によって、また、多くの大企業が利益を得る。
オリンピック招致のために行って前回のトルコ訪問。歓喜に沸く安倍は、一つの歴史的事実を持ち出さなかった。エルトゥールル号事件のこと。
そのことを僕はここでも指弾し、他でも指摘し、その無知なることを“罪”でさえあると言った。
イラン・イラク戦争時、その事件の恩返しだと言って、トルコ国民は事件のことを皆、教科書で知っているとして、バクダット空港にいた日本人を救出した。
恩返し。この話を聞いた塾生は「恩送り」という言葉を僕に教えてくれた。
当事者ではなく、後世の人たちにも恩を送ることと。
安倍は、その日本人救出の“恩返し”に原発と言う”仇“を返そうとしているように見える。
なぜ、今回、エルトゥールル号事件の関係者を集めて“感謝”を伝えることをやったのか。誰かが入知恵したのだろう。
エルトゥールル号事件のことを、安倍がそれに感謝したことを、NHKは再三、ニュースで伝え、その関連の話題も伝えていた。まるで政府広報の如くに。
どうやら、感覚的に言って、安倍晋三なる男は“独裁”の道を歩もうとしている。破壊されつくした後に独裁者が生まれ、独裁がまた破壊を呼ぶ。まさに輪廻のような流れ。歴史もそれを物語っている。
不思議なものだ。過去に生み出されて芸術や文化は、今を見通しているかのようなことが数々ある。
黒沢明の夢という映画にしても、歌にしても、文学にしても。この美術館にある作品も、2006年に、作者は「今」を見通していたのかもしれない。
国中が経済成長に雪崩をうち、特定秘密法を作り、日本版NSCなる組織を作り、すべての機能を官邸に一元化するという。
独裁と言ってなんの不可思議やあるか。
かつての「師」の諫言にも耳を貸すどころか一顧だにしない。師に背いても己の考えを押し通そうとする。お茶坊主、お側お局さまは、その尻馬に乗る。
彼らを“破壊”することは不可能のようだ。まさに日の出の勢いなのだ。国民の半数がそれを支持すらしている。
君はボスポラス海峡を見たか
ボスポラス海峡を見ずして、ボスポラスを語るなかれ。
そんな詩があった。うろ覚えだが。安倍は視察した。その海ではなく、海の下に通された地下鉄を。技術の粋を見て、それが日本から輸出されてものかどうかはともかく、その上に長年ある海を見たのだろうか・・・。
2013年10月30日水曜日
“チェルノブイリ”異聞
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