大事に、財布の中に入れて持っている一枚の切符がある。
「釜石から復興未来 ゆき」
諦めない限り有効 300円 下車前途無効
311釜石復興の祈り発行 三陸鉄道公認
切符にはハサミが入っており、発行日を印す“消印”がスタンプで押されている。‘24.3.11と。
この‘24の数字の意味が解らない。あの日は2011年だったし、平成では23年だったから。もしかしたら復興未来に到着するのが2024年と見込んでいたのだろうか。
この切符を手に入れた時、やはり感動があった。力強さを感じ、そのアイディアに感服した。
何よりも「諦めない限り有効」という期限。
そして、三陸鉄道はどうやら「停車駅」には到着しそうだ。
4月、三陸鉄道が全線開通になるという。最後まで運休になっていた南リアス線の釜石―吉浜間、北リアス線の田野畑―小本間。
全通となる。
これで僕が持っている切符は用無しなのか。
切符の行き先は、終着駅は「復興未来」となっている。全通をもって復興とは言えまい。
まだ、この切符は、大事な「お守り」としてとっておく。それまでは乗るまい。下車前途無効なのだから。
2011年、台風災害で福島県のJR只見線の線路が流された。只見川にかかっていた鉄橋。
JR東日本によれば、沿線住民の只見の町民の要望はあるものの、復旧させる考えは無いようだ。85億円の費用がかかるから。復旧させても、採算路線にはならない。運賃収入で費用を回収できない。それが大きな理由とか。
只見線は会津若松と新潟県の魚沼市を結ぶローカル線。車窓から望める光景は素晴らしかった。鉄橋を渡るローカル線の雄姿も美しかった。
奥会津只見町。そこは、かつて人で大いに賑わった町だった。今の人口が3,000人位だとしたら、一時期、そこには万を越す人が集まっていた。
只見川電源開発。田子倉ダムを作っての大規模な水力発電。東北電力の管内。その水利権を新潟県が持つか、福島県が持つかで揉めたところ。両県知事の交渉にまだ1年生議員くらいだったろうか、田中角栄が入って半々でまとめた。
時の東北電力の社長はたしか白洲次郎。東山温泉で毎夜どんちゃんさわぎを繰り返していたという。民謡会津磐梯山の替え歌まで出来ていたとか。
ダムが完成し、出稼ぎ含め多くの作業員が去り、只見は“寒村”になった。“過疎”の町になった。かつて、人や資材を積んで走った只見線。鉄路の役割は、少なくとも採算が合うというレベルでの役割は終わったということか。
そして福島県浜通りを貫いていた常磐線。東京と宮城県を結んでいる鉄路。常磐線は、当然というべきかどうか、原発事故で寸断されている。全線開通の見通しも無い。部分的に運行されている。
出稼ぎ、集団就職。日本の経済成長を支えた人達が手にしていた切符。その行先には「明るい未来」とでも印字されていたのだろうか・・・。
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