2014年1月29日水曜日

「数字」のある日々

時々、地元紙のおよそ半面を使って書かれている数字を見ることがある。
モニタリングポストの記録だ。県内の放射線量の。
郡山でもその測定箇所は数十か所。ほとんどの地域が、年間1ミリシーベルト、いわゆる時間あたり0,23μシーベルトよりも低い。0,24とか0,25が時々散見される程度。

程度っていうのは、根拠が無い。放射線の影響に関する数値って、どこにも確たる根拠がないのだから。
国が決めた0,23μ。それ以下の地域がほとんどなのに、除染は進められている。しかも遅々として。

新聞半面を使って数字が並んでいる、しかも小さな字で。このことがつまり「福島」の実態だ。
放射線と、数字としての放射線量と毎日向き合って暮らしているということ。
株式市況欄と見間違うような。

この「放射線量」の欄が無くならない限り、福島県は「汚染」から解放されない。
しかし、仮のこの欄が必要でなくなる時が来ても、無くしてはならない欄のような気さえする。それは「モニュメント」としての数値であってもいいのかもしれないし。

NHKの夕方のニュースでも、毎晩伝えられている。県内各地の放射線量。
およそ1分。最小値と最大値が。淡々と伝えられる数値。福島にいることを実感する。

原発事故後、テレビはL字に切った画面で毎日、一部民放も含め、県内の線量を伝えていた。
郡山が2μになったのはしばらくしてから。下がったなと感じ。
やがて1μに。

数カ月たって町内会から線量計貸し出しの案内。1軒あたり1時間。庭で1,5μくらいあったか。室内でも1μ程度だったか。書き留めていた紙はすでに捨ててしまった。

そういえば、テレビは連日のように言っていたな。外出は出来る限り控えるように。帽子の着用、マスクの着用を怠らないように。コートも。帰宅したら、付着物を玄関先で振り払い「手洗いとウガイを励行するように」。来ていたものはすぐ洗濯するように・・・なんて。そうそう、マスクは一回使ったら捨てるようにとも。

「にわか専門家」が溢れていたな。テレビにも、ネットにも。50キロ圏内まで避難するようになるって“噂”が充満していたな。
線量と同時に伝えられる天気予報。風向きが関心事だったよな。

線量の数値にばかり目が行き、何の番組をやっているのかほとんど見なかったよな。

夕方のNHKニュースと地元紙の細かい数字。それ以外は、多くが平常に戻った今。東京発のテレビ番組では尚更。

ノロウイルスや新型インフルエンザの話題に集中している。インフルエンザの予防策、ウガイ、入念な手洗い。家庭でも学校でも。
あの頃の“光景”に似ているな・・・。

しかし・・ほんと、とんでもない事故を起こしてくれたんだよなぁ・・・。

NHKのローカルニュースついでに。飯舘村の「残された犬や猫」のことを取り上げていた。野良じゃない、飼い犬、飼い猫。犬は200頭、ネコは400匹はいるだろうと。

玄関先に鎖でつながれたままの犬。飼い主は避難先から1時間かけて日中は出入り可能なこともあって、餌をやりに来る。手作りの温かいご飯を持って。「再会」を喜び合う。涙とともに。
夜間の気温はマイナス。水は凍っていて飲めない。水用のボールは氷。置いてきた餌は無い。夜中にネズミが食べていってしまう。ネズミが残したものを食べようにも、半分凍っているドッグフード。犬は一ずつ拾い上げて口で溶かして食べている・・・。

実態のレポートはあった。実情も知った。だかららどうしたらいい。それへの言及は無い。避難先に連れていくことは出来ないのか。家の中に入れておくことは出来ないのか。
「表飼い」の犬はしっかり放射線を吸い込んでいる。

数分間の“特集”。ラストカットはその犬の遠吠え。大きな声での。我が家の犬はその声を聞いてテレビに飛びつく。
室内犬と一緒に暮らす夜、日々。飯舘の犬の顔と鳴き声が耳に残り、目に浮かび、晩飯は喉を通らないような心持だった。脇に犬がいることに、寝ていることに「うしろめたさ」をひしひしと感じ・・・。
あの犬たちは自分の一生をどうとらえているのだろう・・・。こんな生活はまだまだ続くのだ。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...