明日から東京渋谷の円山町にある小さな映画館、“小屋”でドキュメンタリー映画が公開される。
何回も書いている「無人地帯」。2011年の4月、浜通り、飯舘を主に撮った原発事故をめぐる記録。製作者自らが認める「破壊」の記録。
//この40年間、250Kmはなれた東京はここの電気の恩恵を受けて来た
その東京では誰も大惨事を想定しておらず 今 何をすべきかも誰も分かっていない
何が起きたのか誰にも分からない 何が起きているのかも今後どうなるのかも
原子炉の中のことはデータでしか分からない
この事故では データは極度に断片的だ
停電でほとんどの計器が止まっているのだ
放射性物質も目に見えない その見えない微粒子が
偶然 風に運ばれて雨と共にこの風景と人々に降り注いだ
それでも見たいのはただの悪趣味か
あるいは このすべてに意味を求めるせいか
見えない破壊の不安から何か見たいだけなのか//
映画のナレーションの一部である。
そして、制作した監督はこんな感想も言っている。
「これから“無人”とされるかも知れない場所を撮りに行ったはずが、結果として僕たちが撮っていたのは、とても人間性の豊かな、敬愛すべき“人間”であり、その人たちの持つ人間本来の智慧でした」と。
この映画はいわゆる劇場公開はされてこなかった。福島の浜通りでは映写会のようなものがあったが、完成から2年以上経っての劇場公開。
しかし、その劇場は「ユーロスペース」という映画専門学校内の劇場。収容数は100人程度か。
渋谷のはずれ、片隅にある多くの人が知らない劇場。
そこでの試写も観たし、DVDは何度も観た。そして思った。これは東京の人が観るべき映画だと。観て貰いたい映画だと。
監督は続編を用意している。しかし、それを完成させるための資金が無い。興行収入がなんぼというレベルではない。続編が出来ればいいのだ。
折から東京では都知事選。候補者が繰り広げる「原発論争」は、ある意味「不毛」だ。
原発論争は、戦争をめぐる歴史と似ている。映画は「人」の目線で、当事者の「人」の目線で、その事故を描く。
政治の場で交わされる原発論議。それは、「国家」としての「政策」としての論議。
戦争で、戦場に赴いた兵士やその家族の物語は、歴史としては残らない。死者の数だけが残される。引き揚げ者の数だけが。
国家として伝えられる戦争。そこには「人間」は介在していない。
たまたまのタイミングではあろうが、都知事選が佳境にある今、東京の“片隅”で上映されることに意義があると思うのだ。
「“遺言” 原発さえなければ。福島の3年間、消せない記憶のものがたり」
そんな題名のドキュメンタリー映画も3月8日からポレポレ東中野という“小屋”で上映されるという。そこも言ってみれば片隅のようなところ。
遺言というタイトルは堆肥小屋の壁に「原発さえなければ」とチョークで書いて自殺した相馬市の酪農家のことだろう。
東京の片隅で「福島」が映し出されている
きょうもテレビでやっていた。消費税増税の前の駆け込み需要の話。家を買う、買った。車を買う、買った。家具を新調した・・・。
そして株価の上下に一喜一憂。そう「東京」のテレビ。
片隅・・と書いていて歌を思い出した。
須賀川出身の演歌歌手、門倉有希。彼女の持ち歌に「どうせ東京の片隅に」というのがある。自伝のような歌。夢を抱いて出て行った東京。そこでの望郷歌。
もう20年も前の歌だろうか。縁あって彼女と知り合い、須賀川の文化センターでその歌を聴いた。
どこを検索しても出てこないけど、歌の合間に語りがあった。祖父が焼く炭焼き小屋の煙、その煙越しに見える安達太良山の光景・・・。それらを“捨てて”東京にいった彼女。
その歌の語りと無人地帯にあった飯舘の風景が重なる・・・。
2014年1月31日金曜日
“チェルノブイリ”異聞
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