2011年6月24日金曜日

「命のつかいかた」

塾生が一冊の本を届けてくれた。「3・11 心に残る140字の物語」。

内藤みかさんという作家でエッセイストの女性が編者としてまとめた本。
震災後、茫然自失として書く事さえ辞めていた内藤さんが、ふと気づいてツイッターを開く。そこにはなんと多くの「物語」が展開されていた。140字という限られて字数の中で、いや限られているからこそ、余分なものはすべて削ぎとり、様々な思いを凝縮させた物語。内藤さんはそのなかから100篇を拾って本にまとめたという。

その中の一つの物語を引かせてもらう。

        「命のつかいかた」

王は言った。
 「一からこの国を再建する。しかし生贄が必要だ。誰かこの国の未来の為     に名乗り出てはもらえないか」
予定を上回る若者が集まった。誰の顔にも迷いはない。王は心から安堵し、自ら毒を飲み干した。
「生贄は余だ。お前たちはよく話し合い新たな王を選べ」 
復興は早かった。

この本を菅直人が読むことはまず、絶対にないだろう。しかし、読んで貰えればと思う。

この本の帯封にはこう書かれています。

ほっとする。涙が落ちる。明日への勇気が湧いてくる。
一人ひとりの気持ちが集まって大きな募金になるように、小さな作品が集まって一冊の本になりました。この本ができるのは、誰かの心を温かくさせる「ココロの支援」。そっと開いてみてください。

集められた「物語」は被災地の人が書いたものもあれば、そうでない人たちのものもあります。

先週、書いた随想。そこに亭主は書きました。「表現が”生きる”ということに結びついてくる。絶望的な状況に置かれた時、こうした”表現”することを持っているかどうかが重要な意味になる、と。

この本に集められた物語の作者たちは、皆、強く生きようとしているのでしょう。
書かなくてもいい。しゃべるだけでもいい。怒りの感情でもいい。
何かをすることで何かが変わる。何かをすることで自分も変わる。

この本を何回か読み返すつもりです。自分の中の何かが変わるかもしれない。そっと開くつもりです。そして、多分、頁を繰る度に涙をながすことになるでしょう。

ひとつだけ挙げた物語。作者のツイッター名はもちろん書かれています。だけど、どこの誰だかは探さないことにします。

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