燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや)。
史記にある有名な言葉。小人物には大人物の大きな志や考えがわからないというたとえに使われる。それが本来の解釈なのだろうが・・・。
「ツバメやスズメのような小さな鳥にはオオトリやクグイのような大きな鳥の志すところは理解できない」。
あえて、ちょっと当てる字を変えてみる。
燕雀安んぞ亡国の悲しみを知らんやと。
去年の今頃だっただろうか。飯舘村の全村避難が始まった。家々の軒下には燕が巣を作っていた。親は雛に餌を与え、棲みかを作っていた光景。
家を出る家主はツバメに語りかけた「留守をよろしくお願いします」と。やがては「帰村」出来るよう言う大きな志をもって避難する人たちは、小さいツバメや雀の願いを託した。
その志は達成される見通しが無い。越冬したツバメは戻ってきているのだろうか。
雀は・・・。
放射線を意に介する様子も無く、ツバメは巣をつくり、雀は田畑の餌をついばんでいた。
避難所から一時帰宅した人たちも軒下のツバメに癒され励まされたという。小さな鳥に願いを託すという望郷の念。
亡郷、亡国の民となった人たち。スズメやツバメたちと会いたがっているだろうに。自分の家に“居候”した・・・。
なぜか今年は燕や雀の姿が少ないような気がする。時々電線に群れをなして止まっていたのに。“哀しみの地”を避けているかのような・・・。
鴻鵠とは誰を指すのか。どこを指すのか。燕雀とは誰を指すのか。
史記の文言に異を唱えたくなる。鴻鵠いずくんぞ燕雀の心情を知らずやと。
2012年5月15日火曜日
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