朝、窓のカーテンを開けると隣の田んぼに水が入り始めていた。早速、どこからか野鳥が飛んできた。一羽、二羽、三羽・・・と。カエルの声が聞こえるはず。
でも、いつもの季節より水張りが遅い。水を張っても、代掻きをする人、苗を植える人手が少ないとも聞く。
除染の仕事に回っている人が多いからと町内会長の説明。
知り合いの旧家に届け物に行った。やや雑然とした庭や周りの光景。
「植木屋さんに頼んでいるんだけど、除染が終わるまでは手が付けられない」っていわれたとか。
その家の周りは竹の子や山菜、山椒、ワラビがあるはず。
ホームセンターに寄った。母の日。カーネーションを買う人たち。
花やハーブ系の植物が山のように並べられている。
顔見知りの仮設の人とぱったりの出会い。
「いい季節だ、せめて花でも育てないとな。土をいじってないとおかしくなっから」。
それぞれがパーツ、パーツの光景。そのパーツがうまく重ならないのだ。
前にも書いたかもしれない。ジグソーパズルとしての福島と。壊れたジグソー。そのピースピースを拾い集め、埋めていく作業の福島と。
ピース、ピースは見つかった。でも、そのピース自体が形が変わってしまっていた。もううまくはめ込めない。
そんな今の福島。
人間関係がおかしくなっているのだ。形が変わってしまったのだ。
カネは人間のこころをむしばむ。3年前にも書いた。原発誘致、建設でカネがばらまかれた。シャブを打たれた。
シャブをうたれたからだは、時が経つと、シャブが切れてくると、またあらたなシャブをほしがる。2Fはその第二弾のシャブだった。
そして、7,8号機までに手を伸ばそうとした・・・。あの双葉町だって。
そして事故。補償、賠償でもまたシャブ。中間貯蔵施設建設でも、またシャブ。
シャブを巡って県民同氏がいがみ合う。風評被害という見えるようで見えないものを敵視する。
振り返ってみれば、味方の中に敵がいたということ。
カネが人のこころをむしばんでいく。いがみ合いの原因を作る。
かつて在ったピースは、そうではなくなった。
放射能汚染からだけではない。人間関係の“汚染”から逃げ出したくて「自主避難」する人だっているのかもしれない。
自主避難をしていた人たちが、なかなか戻ってこない。“こころの汚染”と立ち向かうことの苦しさがわかるからだ。
すでに廃校が生まれている。人口減。廃炉を待たずに廃村、廃町が生まれるかもしれない。
だから思う。元あったジグソーパズルは作れないと。形を変えたピースで新たなジグソーパズルを完成させなくてはならないのではと。
田んぼにやってきた野鳥が餌をくわえて飛んで行った。
除染されていない我が家の庭。その脇にいつの間にか生えていた蕗。煮物にして食卓にあがった。
ほろ苦く、かぐわしく、まさに季節の味覚だった。命の恵みをもらったような感傷にすらひたる。
食に供されない食物の数々。放置されたままに山野。野の食べ物も、そのピースの一部なのか。
非日常が日常になってしまった現実。5月の眩さの中での妄語。
2014年5月11日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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