関西電力の大飯原発3,4号機運転差し止め判決。早速関電は控訴した。予想通りと言うか当然というか。
福井地裁の判決。画期的判決だったともいえる。それは単なる「法解釈」「法の名のもとに」という“慣行”を打ち破った考えが判決理由の中で縷々語られているから。
「原発の運転停止で多額の赤字が出ても、豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これが取り戻せないことが国富の喪失だ」。
福島の事実をもとに言及したものと理解する。福島に関する言及は随所にあったが・・・。
国土を守るということは、「土」を守るということだ。数日前か、そんなことを書いた。軍事力で、戦争で守るのではなくと。
国富という言葉。アダム・スミスの「国富論」を想起した。学生時代、経済学の入門書として与えられた本。読んだ。いや、正確に言うと字面を追っていた。ということかもしれない。単位を取るための。
覚えているのはその中にあった「見えざる手」という章、言葉。
“人は自分自身の安全と利益だけを求めようとする。この利益は、例えば「莫大な利益を生み出し得る品物を生産する」といった形で事業を運営することにより、得られるものである。そして人がこのような行動を意図するのは、他の多くの事例同様、人が全く意図していなかった目的を達成させようとする見えざる手によって導かれた結果なのである”。
もしかしたら、原子力発電というのも、この見えざる手によって導かれたものかもしれないということ。
樋口英明。この裁判長の名前は手帳に書いて残しておきたいと思う。
裁判長は地震学や原子力工学をはじめとする、原発にかかわる専門家では無い。それが「福島の事故のような事態を招く危険性がある」と断じた。安全技術と設備は脆弱なものと認めざるを得ないと断じた。
想定される地震の規模にも言及した。その危険性にも言及した。
想定外のことも想定内に入れた判断と言えようか。
原発稼働によるコスト論、経済性、それよりも優先すべきは生存にかかわる人格権とも主張した。いわば憲法論だ。
「生存を基礎とする人格権は憲法上の権利であり、法分野において最高の価値を持つ」。最高裁が避け続けている「生存」をめぐる憲法判断。そこに地裁の裁判長が踏み込んだ。
だから「画期的判決」だと思う。国民的目線、いや、市民目線と言ったほうがいいか。法理論の展開だけでなく、その目線が多岐に渡っていたことも、言葉は適格ではないかもしれないが、面白い。
アダム・スミスを引くまでもなく、「国富」とは何か。それが、今、我々に問われていることだから。
高裁の判決にもよるだろうが、最高裁まで持ち込まれる可能性はある。多分、最高裁では一審判決破棄という結論が出されるだろう。
民主主義の概念に三権分立というのがある。建前になってしまっている。
改憲論議は立法府で行うべきこと。行政府の長である内閣が解釈で決めることではない。
立法府の長、衆参の議長人事は、時の政権の人事の一環として決められる。
議長は「一丁上がり」のポストとされてきた。
最高裁長官も総理大臣が決める。
4権とされるマスコミ。少なくともNHKの会長は総理大臣が決めた。
それがこの国の民主主義。
折しも、裁判員裁判官制度が出来て5年。この裁判長は裁判員制度の“利点”当初の“理念”が頭の中にあったのではないだろうか。だから一般人、市民目線で「原発」を捉え、判断したのではないだろうかとも。
「無かったこと」にされるかもしれないが、この裁判の、判決の意味は大きい。この国の有り様にまで言及した司法判断として。
そして更に一言。この裁判長は「フクシマ」の事がわかっているということ。
2014年5月22日木曜日
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