平成23年4月22日。日本という国の福島県という地方の中でついに棄民政策が淡々と行われた。対象者7万8千人。
東電原発20キロ圏立ち入り禁止。警戒区域。災害対策基本法に基づくものだという。
なぜ、この時期に強制力や罰則を伴った法的措置が出されるのか。わからない。わからない。
理由は。「住民の健康と防犯」と枝野はいう。どんな健康被害があるの?起きるの?計測された放射線量。どれだけ浴びたらどうなるの?
誰もちゃんと説明してくれない。すべて「可能性」。圏内は同じ数値ではない。どれくらい浴びたら、いつ甲状腺癌になるの?
誰も教えてくれない。
防犯。あの広大な地域を何人の警察官で見まわれるの?
悪い奴はどこからでも行ける。
いや、すでに荒らされている。
多くの畜産農家があった。過去形になってしまった。牛の餌やりにもいけない。確実に牛は死ぬ。
罰金いいじゃん。拘留いいじゃん。理由も判然としないのに立ち入り禁止。
裁判やればいい。裁ける裁判官はいないけど。牛に餌をやろうよ。牛だって生き物。
だから、きのう、ボクは普段は自分から発信しないツイッターでつぶやいた。いや、叫んだ。「菅首相よ、ボクは仮にあなたが死んでも涙を流さない。流す涙を持たない。しかし、あの放置された牛の一頭でも死ねば、多分思いっきり泣くだろう」と。牛に最後の餌やりに行った酪農家が一頭、一頭の牛に「ごめんね」と泣いて謝ったというから。彼の涙をボクの涙として共有したい。
計画的避難区域、緊急時避難準備区域。わかんない。わかんない。ちゃんとした根拠がわかんない。
流浪の民は翻弄されるだけ。
菅のおざなりな避難所視察にあわせて出された区域設定。それに合わせて、これまでは官邸が止めていた文部科学省の放射線量測定結果発表。
だれかが決めた年間100ミリシーベルト。越えて無いとこ多数。
警戒区域設定。県外にはますます原発汚染の風評が広まる。広まる。燎原の火の如く。
舌の根も乾かぬ内に枝野は言う。「重大事故が発生するリスクは相当程度低下してきている」と。わかんない、わかんない。何が本当なのか、なにがどうなっているのかわかんない。
棄民達のあすは全く見えない。うつろな日々。
東京のテレビ局のスタジオでは警戒区域への一時立ち入りの方法について、まるで他人事のようにフリップ使ってアナウンサーが滔々と説明している。東京の人には関係ないじゃん。
東京にいる人による東京で見ている人達のための東京のテレビ。
テレビ局では50キロ以内に入るな、40キロ以内に入るなとキー局から指示が来る。現場の記者達の悩み。
だれが棄民に寄り添えるのか。
警戒区域設定が発令される数時間前。テレビの画面に流れた地震以外のニュース速報。キャンディーズのスーちゃん、田中好子さんの訃報。
キャンディーズ解散後、彼女が芸能界に復帰したおおきなきっかけが映画の主人公を務めたこと。その映画は「黒い雨」。数々の映画賞を受賞した。広島の原爆投下と、そのあとの放射生物質を含んだ泥のように降る雨を題材にした井伏鱒二原作の小説の映画化。
死因は乳癌。もちろん彼女は放射線被害は受けていない。放射線治療は受けたかもしれないが。
2011年4月22日金曜日
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2 件のコメント:
亭主さま
あの骨と皮になって痩せた牛さんたち。「モー!いい加減にしろよ」との声も出なくなって。
餌やりに帰った飼い主は「餌をやらずに放した。野生になって生き延びてくれることを願って」
こんな悲痛の願いに今日も涙腺が緩む。
塩野七生の「日本人へーリーダー編」をまた読み直している。虚しさが募るだけと知りながら・・・。
tacoさま
リーダーのいない国、いない国家。もちろん自分もなれないけど。自らがリーダーを決めて生活している猿や馬や牛。野生の生き物の方が人間よりもずっと立派。
餌をやりに行きたいよ。マジ。
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