2011年4月23日土曜日

夜の森公園の桜

郡山は今が桜の真っ盛りと思いきや。昨夜来の雨・・・。大雨ではないから桜もきっともちこたえてくれるでしょう。

花見るもよし、見ざるもよし。

東電原発の警戒区域に富岡という町があります。役場ごと郡山に避難してきています。先日、菅首相が訪れたビッグパレットという施設に。

富岡町の観光スポットに「夜(よ)の森公園の桜」があります。JR常磐線には夜の森という駅もあります。それはそれは素晴らしい桜の名所です。

2,5キロに及ぶ桜並木。ソメイヨシノを含む1,500本の桜が、そうですね、大阪の造幣局の通り抜けみたいな桜のトンネルを作っています。

昔、テレビ朝日で夜桜中継をやって居た頃、夜の森公園からもやりました。若林ってへんなレポーターの。郡山からは車で2時間。福島県は広い。国道288。街路灯無し。あの道は怖かった。それをきっかけに時々夜の森に行きました。

富岡にあるゴルフ場。たしかリベラルヒルズって言った。そこでJLPGA,女子プロの選手権があって、その打ち合わせの会場はリフレ富岡という公共施設だった。夜の森公園のすぐ近く。ゴルフ場もこの施設も東電の”恩恵”あったのか。たしかにゴルフ場の会員のほとんどは東電や関連会社の社員だった。

多分、きょうも夜の森公園の桜は咲き競っているはず。人気の全くない公園の中で咲く1,500本の桜・・・。

役場ごと避難してきた避難所のビッグパレット。”視察”に来た菅に住民の一人が人影の絶えた桜並木の写真を見せた。ここへ戻りたいと。

    人見るもよし、見ざるもよし。我は咲くなり。

桜花はそういいながら咲いているはず。

人影の全く絶えた桜のトンネル。もちろん明りもない。花明りだけが公園を照らす。不気味な光景かもしれません。

その光景を撮った写真を見ると、坂口安吾の小説「桜の森の満開の下」が思い起こされます。桜の妖気が人を殺し、男が悩む。

  桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分かりません。
  あるいは「孤独」というものであったかも知れません。
  なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。
  彼自らが孤独自体でありました。

  山へ帰ろう。山へ帰るのだ。
  なぜこの単純なことを忘れていたのだろう?
  そして、なぜ空を落すことなど考え耽っていたのだろう?
  彼は悪夢のさめた思いがしました。
  救われた思いがしました。
  今までその知覚まで失っていた山の早春の匂いが身にせまって冷めた
  く分るのでした。
 
富岡の人達の、桜にいざなわれた望郷の念やいかばかりか。
 
きのう、ビッグパレットを訪れた東電の社長には富岡の住民からの怒りがぶちまけられました。そんな中、一人の老女が清水社長の手を握って声をかけた。
 
「御苦労さまです。お互いさまです。体に気をつけて頑張ってください」と。
 
叱声や怒りの声は、聞き流そうとすれば聞き流せる。しかし、この老女の言葉は、きっと、きっと清水社長の胸にも刻まれたはず。坂口安吾の小説で出てくる山賊にだって届いたのだら。桜の声が。
 
東電の社長を怒鳴りつける宰相や県知事。怒鳴ってなにかが、いま、解決出来るのか。責めはあとからいくらでも追及出来る。今やるべきことは東電にその気をおこさせること。身命を賭してでも沈静化させること。
 
老女の一言は、どんな専門家やマスコミ人の声よりも重かった。人格者だった。
 
イソップ物語の北風と太陽を思わせる・・・。被害者が加害者を慰め励ます。冷えた心を温かくする。東電のベールを一枚剥ぐ。
もしかしたら、この老女の一言がこの国を救うかもしれない。

 
    

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