郡山で学習塾を経営していた知人から、突然電話がありました。
「瀬川さん、今どこにいるの?東京でしょ」。は??何で。「郡山に決まって李じゃない」。一瞬絶句する彼。
「大丈夫なの?」「何が?」。「いやしばらく東京にいたんだけどさ。郡山はひどいらしいね。放射能汚染。政府は情報を隠してるらしいね。東京の証券会社の人や、いろんな人から聞いたけど」。はい、彼の長い話が続きます。
「あのさ、アメリカが80キロ圏内の人に退避を指示したでしょ。あれは菅政権がアメリカに言ったらしい。危険だから国外退避させてくれって。福島市や郡山市の放射線量って実はとんでもない数字らしいよ。大丈夫?」。
適当に聞き流していたけど要約するとこんな話。あげく「本当のこと教えてよ」ときたもんだ。もう50歳を過ぎた大の大人だよ。おれが本当の事を知ってるわけもない。
「外国人を非難させて自国民を見殺しにするなんてひどい政権だけ」と来ましたね。驚きました。
「あのね、アメリカだって80キロ退避を、後になって間違いと訂正してるじゃないの。原発の内部がどうなっているかはわからないけど、放射線量は発表されてる数字、少しは減ってきているし・・・」。
「いや、その数字自体がおかしいって話だよ」。
百歩譲って国や東電が嘘をついているとしても、県や市が嘘の数字を出すわけないでしょ。まして、最近は個人でサーベイメーターもって計りまくっている人もいるくらいだからと言う亭主。だんだん政府の擁護してるみたいになって自己嫌悪。
「安全だって保証するの?塾に通ってくる子ども達を安全なとこに避難させるのは当然でしょ」。はい、子供に対してはそうかも。でも、それは亭主が保証云々の話でない。学習塾をやっているのはあなた。
どうも、彼の周りというか、東京の中のそれなりの”エリート”といわれるような立場にいる人達が言ってまわってるみたい。もちろんごく一部の。
「大使館関係の確実な情報源からきいたんだけど」。まだまだ彼の話は続く。
「あのね、あなたに届くほどの情報が政府から漏れるってことは無いよ。どこの誰が言ってるのか名前言ってごらん。そいつに直接聞いてみるから」。
やっと電話を切ってから気づきました。こんな類の情報がけっこう飛び交っているんだということを。だから「福島いじめ」「福島偏見」がまかり通っているんだということを。風評被害が蔓延してるってことを。
放射能。目に見えない怪物。おなじく目に見えない情報という名の化け物が増幅されているんだなと。
情報隠し。たしかにあった。東電。それは明らか。保安院も然り。だからか。
細野補佐官が東電と保安院を陪席させての記者会見。情報の一本化だと。
あのね、東電と保安院は相対する存在の筈。一緒になってやる記者会見って・・・。
亭主の世代では思わず言いたくなる「大本営発表」。嘘で塗り固められた大本営発表。炉心溶融。崩壊を損傷と言い換える東電の如し。
政・官・業の一体化した記者会見。まさか、バラバラの会見で人手さかれるのを嫌がったメディアが一緒にやってと言ったわけでは無いと思うけど。
新聞・テレビ・ネット・ツイッター・・・・。あらゆる媒体を通して、それを受けられる環境にある人達は、もはや情報の洪水で頭の中が”汚染”されてしまっているかも。
欲しい情報と、いらない情報が交錯している。安全か安全でないか。学者という人達の意見もマチマチ。正反対だったり。
どうやら原発事故は放射能災害に続いて情報災害という新たな災害を産んできた。
どうすっぺ。
2011年4月26日火曜日
“チェルノブイリ”異聞
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