2013年1月27日日曜日

「戦士」と呼ばれて・・・

アルジェリアでテロの犠牲になった日揮の社員や関係者を安倍は「企業戦士」と呼んだ。「戦士」と称えた。
他にも彼らに「戦士」という呼称をつける人がいる。

戦士とは何か。戦争をする人である。
少なくとも、幼少の頃、「戦争」と体験した身にとっては「戦」という言葉や字が嫌いだ。

「企業戦士」という言葉がメディアに氾濫していたころ、それが平気で使われることに嫌悪感を覚え、他の言葉に置き換えようと腐心したことがある。

日本人は好戦的な民族とは思わないのだが。

企業戦士とは、寝食を忘れて、彼れが所属する企業が、その競争に勝ち抜くための前線で活躍する人達のことだろう。

日揮の社員や関係者は、アルジェリアの地で、何を相手に、何を敵として戦っていたのか。
戦争をしに行っていたのではない。企業人として、エンジニアとして、その仕事における使命感を持って行っていた人達。

非業の死を遂げた「戦士」として、その英霊を祀ろうとでもいうのか。
「戦士」と呼ばれることを亡くなった彼らは“誇り”と感じているのだろうか。

3・11前からも、「原発戦争」という言葉が使われていた。事故後、あの敷地におもむいた人、そこにいた人達、収束に携わった人達に「戦士」という表現が使われていた。

すべてが「戦」・・・。

戦争を終わらすためには勝つ方と負ける方がいる。

テロ、憎むべきことである。アメリカ大統領は再三使う。「テロとの戦い」という言葉を。武力をもってテロリスト達をせん滅しない限り、それは終わらないのだが・・・。

きょう、テレビを見、新聞をめくっているなかで、もはや「氏名公表」問題についての論議はなかった。その問題をめぐり、斜め読みのSNSで一冊の本が紹介されていた。
東日本大震災の被害者。300人以上遺体を、その死を整えられてものとするために、傷んだ遺体を「復元」するボランティア活動をしていた人が書いた本。

「おもかげ復元師の震災絵日記」。その本にはいっさい亡くなった方の氏名は書かれてないという。しかし、その人が故人を追悼する想いが伝わってくるという。供養と弔いと悼みと。その場に立ち会った人でなければ感じられない想いが書き、描きとめられている。復元されて遺体はどれも満足そうであり、そこに尊厳が込められているという。

氏名公表を迫った記者や会社。書いた記者。紙面に載せた会社。放送した、氏名を読み上げたアナウンサー。数日後の今日、彼らはその名前を覚えているのだろうか。悼んでいるのだろうか。もう、終わったことにされているのではないだろうか。「死」が。

メディアの目線は、すでに、事件の背景やアフリカ、中東をめぐる国際情勢の認識、危機管理の問題に向かっている。それは当然そうあるべきなのだが。

おもかげ復元師の本を紹介していた人は書いていた。氏名公表によって何が追悼されたのかと。そのことへの疑問を書いていたような記憶。

「メディア・ウオーズ」。メディア戦争か。そんなタイトルの本を書いていた著名ジャーナリストもいたな・・・。

2 件のコメント:

TACO さんのコメント...

亭主さま、
外から見れば企業戦士という言葉が使われるのかも・・・。でも日揮社内では使う人は誰も居ません。建設現場駐在員の立ち向かう相手(敵?)は「危険」(安全)、「孤独」(自己)だから。
以下は、日経新聞の「春秋」コラムから。ここでは「侍」という言葉を使っています。
▼炎熱の砂漠、多湿のジャングル、氷点下の氷原。地球上のあらゆる極限の地で、この会社の社員は働いている。プラント会社の日揮は、約2千人の社員の1割以上が常に海外の建設現場にいる。その多くが難居住、危険地帯と呼ばれる、常人には想像もできない場所だ。
▼アルジェリアのイナメナスも、その一つだった。そんな危ない所になぜ。そう聞かれて、ある社員は「資源がそこにあるから」と淡々と答えていた。石油やガスは、もう簡単な場所では採れない。遠い国、厳しい気候、治安が悪い社会に飛び込んでいくのはこの仕事の宿命なのかもしれない。社員はリスク覚悟で赴任する。
▼多くの途上国の政府が、日揮という一企業に絶大な信頼を寄せている。日本人の技術者が現地の若者を徹底的に指導して、その国の未来を担う人材を育てるからだ。たとえ資源があっても技術が根づかずに悩む途上国は少なくない。テロで亡くなった社員が教師で、生き延びたアルジェリア人は生徒であったかもしれない。
▼遠隔地に単身赴任する駐在員が口にする一番の困難は「危険」ではなく「孤独」だそうだ。その孤独に耐え、相手国に尽くし、日本の価値観を伝えた侍たちのなきがらが、もうすぐ政府専用機で帰還する。できれば仰々しいフラッシュではなく、静かな気持ちで迎えたい。失われた命の重さと遺族の無念を思い頭(こうべ)を

亭主 さんのコメント...

tacoさま

いいコラムだね。取材も行き届いているような感じだし。
あいかわらずネットでは黒を白といいくるめようと躍起になってる新聞記者もいる。
朝、毎の記者に読ませたいような日経。