2013年1月11日金曜日

1年10カ月、錯綜する想い・・・

毎月11日は必ず訪れる。月を幾ら経ようとも、11日は「特別な日」である。「特別な日」となった。

被災地では、それぞれの場所に人が集まり、午後2時46分に祈りが捧げられるだろう。
それ以外にも、気がついた人はそれぞれの想いで手を合わせるかもしれない。

この日を狙ったわけではないだろうが、事務所のポストに一冊の本が入れられていた。塾生が持って来てくれた本。
「死の淵を見た男、吉田昌郎と福島第一原発の500日」。数ページ眼を通す。読みふけりたい。だけど無理なのだ。本を読む前にしなければならないことが山積している。来週は塾だ。その準備だ。そして連載の締め切りも迫っている。

風邪が尾を引き、混濁した頭でこなすのはしんどいが。

その本には走り書きのメモが添えられていた。
「どんなに科学技術が発展しても、命を救うことが出来るのは人なんだと思いました」と。

そう、あの日以来、塾生に説いていた事。そして、その一人から本を持って来られる。ボクは「果報者」だと思った。

その子は、かつて医療従事者だった。医療の現場で、進歩し続ける医療技術と人としての患者、そして人としての従事者。たぶんある種の“葛藤”があったはず。
3・11を体験して、その子の中で、「開花」したものがあったのだろう。もちろん3・11を肯定的に捉えるわけでは断じてないが、あの“地獄”や、その後の“様”を凝視している中で、“覚醒”される人もいたということ。

昨夜、ボクは普段やらないことをやった。ツイッターに反応してしまった。
オリンピック東京招致の記者会見で、猪瀬直樹が外国人記者の、放射能汚染を問われて答えた言葉。「東京と福島は離れているから大丈夫」と答えたという件。
そのツイートをリツイートし、東京オリンピック招致反対派に転ずると書いてしまった。
それがまたリツイートされていた。数多く。

外国人記者の“過剰な反応”、それに咄嗟に応えた猪瀬の言。東京と福島は離れている。それは距離の問題ではない。心がすでに離れているということの証左ではないかと勝手に勘ぐる。しかも福島と一括りで言う。県内には東京界隈の一部地域よりも低線量のところもあるのだ。言いたいなら「原発地域や、その20キロ周辺」と言えばいい。どうしても比較したいのなら。

どうして、「フクシマ」の問題を「全国」の問題として捉えることが出来ないのだろう。
もはや、言い尽くされて言葉だが、「あなた達が使っていた電気は福島が供給していたんですよ」。いまや子供でも知っているこんなことを博識の猪瀬知事に言いたくなる悲しさ。

猪瀬に票を入れた良識ある都民はなんと思ったのだろう。オリンピックを招致したいがために「吐いた」一言が、東京と被災地の“断絶”をこれまた深める。都知事として無定見な発言。やはりそれはこの国を覆っている「空気」なのかもしれない。

石原都政を継承した猪瀬都政。慎太郎の息子は環境大臣だ。なんと聞いたのか。

朝日新聞のいわば「スクープ」だった除染をめぐる「不正」の数々。担当官庁は環境省。そのオサである伸晃は、ほとんど沈黙して語らない。
「全体的な詳細を報告してもらうので、それを見て判断する」と述べた程度。それが、何党であろうと、政治家の実態だ。

ボクはこの場で、よくマスコミ、メディア批判を書いている。それは批判のための批判ではない。いやしくもその端っこに居た身であり、その「第4権力」と称されるものの必要性、重要性を認識しているがこそ、その内部もそこそこ知っているがこそ、覚醒してくれという意味を込めて批判を書いている。

権力を監視できるのは権力でしかないのだから。腰が引けた第4権力に腹が立つのだ。

そしてあらためて思う。ボクの人生は、「ひ弱な反権力だった」なと。
それは仕事の上でも、会社の内部にあっても。

安倍政権が「復興」に向けてどう臨んでくるのか。まだ、見えない。霧の中だ。復興予算は増額するという。縦割りだった行政を“盟友”根本匠に託し、「福島再生総局」を作ると言う。

いわば「枠組み」の話だ。復興予算が適正に使われるのか、あのずる賢い官僚どもを使いこなせるのか。それへの評価は、動き出してからだ。

動き出す・・・。もう1年10カ月だよ。待ってはいられないことばかりだよ。

この時期、東北には山から下りてくる風が強い。寒さにうちふるえている人達がいる。
もし、仮に、強烈な北からの風が吹いたら・・・。福島の一部の山林に付着している放射性物質が、東京にそれを運んでいくことだってあり得るんだよ。
こころに「壁」を作っても、それを遮ることは出来ないんだよ。猪瀬さん。ざっと見た限り、あれほど熱心だった猪瀬のツイートに、多分、批判や反論が寄せられているのは見ているはずなのに、彼からの「つぶやき」は無い。そして官邸からは無味乾燥なフェイスブックの更新案内が送られてくる・・・。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...