JTがまだ専売公社だった頃、こんなキャッチフレーズがあった。
「きょうも元気だ、煙草が美味い」
そう、たしかに元気な時、体調が良い時の煙草は美味い。健康のバロメーターだった。
「煙草は生活の句読点」。これも秀逸だった。仕事の合間の一服。子供の頃、何かのことで家に来ていた職人さん。
「ささ、一服してください」親はそう声をかけて、お茶と煙草を出していた。
その頃は煙草は吸うとは言わず、のむと言っていかたな。ちょっとした頼みごとをした時の“お駄賃”は「煙草銭」と言った。
「なんだい、煙草銭にもならないじゃないか」。バイトでそんな言葉を吐いたこともある。
きのう、塾生の一人から怒られた。「煙草はやめましょう」と。
亭主は肺疾患の履歴を持っている。右肺の中葉部は切除されている。そこの行くまでに放射線治療もやった。もちろんX線は何枚撮ったことか。CTも何回やったことか。
「典型的なCOPD、肺気腫です」そう医者に言われて「お医者さんと一緒に禁煙しましょう」。それに同意して、薬を飲みながらの禁煙治療。そのさなかに来たのが「3・11」。
やめられるかなと思っていた時のあの惨状。見事に復活。で、きのうは肺のCT検査だったということなのですが。
とにかく世の中、嫌煙であり、禁煙であり、喫煙者の数はそこそこ多いのに、吸うことに対しては肩身が狭い。
頭のMRI検査をしながら、これで吸ってきた煙草の銘柄を思い出し、こじつけをしていた。
最初に吸ったのは、いや、正確には吸わされたのは「ひかり」。まだ“戦後”だった頃、世の中は「光」を求めていた。そして「ピース」。平和願望があったのだろうか。それから「いこい」に。忙しい仕事に憩いを求めていたのだろうか。
テレビに時々顔を出していたころは、なぜか「キャスター」。別のキャスター志望では全くなかったのだけど。同僚からは揶揄されて。
その後。「ショートホープ」。ささやかな希望を求めていたからか。
いや、すごいですね。このこじつけ。
今は「フロンティアライト」。キャスターに“併合”されたらしが。1ミリ。
フロンティアにどういう訳語を当てるのか。開拓者なのか辺境なのか。
東北はしばしば「辺境の地」とされる。しかし、その辺境は開拓にもつながる。フロントランナーにもつながる。
こじつけながらも煙草に込めた願い・・・。
マイルドセブンが欧米からの異論があって「メビウス」と呼称変更とか。
なんだい、これも世相だな。世の中が、世界が「解けない輪」のようだという証かい。ってね。
福島県の農業。一時は煙草耕作者が多くを占めていた。煙草耕作組合っていうのは、JAに並ぶ政治の「票田」であり、大きな圧力団体だった。
かつて、友人の放浪画家が川内村に住んでいたことがある。周りは煙草畑。その画家の住んでいたアトリエ兼の建物も、元は煙草の葉を選り分け、出荷するための作業所だった。
もともとの喫煙者か、にわかにそうなったのかはわからないが、避難所の外に置かれた喫煙所には、いつも人が群れていた。煙草を分けあい、その心を煙に巻かんとばかり、その場で知り合った者同士がいつまでも喋りあっていた・・・。
キャッチコピーを思い出しての煙草談義。風邪が治らないのも煙草のせい。十分自覚しながらも、無意識に手が行くたばこ・・・。けっして「美味く」はなにのですが。
精神安定剤かも(笑)。
意志の強い方、ぜひ煙草はやめましょう。ほとんどが税金なんですし。広く薄くの徴税手法の典型、実勢価格とは違うのですから。
結局、きょうは何を言いたかったんだい。反省。