毎月執筆しているタウン誌で引用した言葉なのですがー。
「信というはまかすと読むなり。他の言に任せる故に、人の言と書けり」。
一遍上人の言葉。
その「他の言」が信じられない。「まかせ」られない。今、この国を覆っている空気。
東電の隠ぺい。ずっと続いていたあらゆることの隠ぺい。原子力保安院の隠ぺい。文部科学省の隠ぺい。
隠していたことが次々と明らかにされてくる。隠していたことだけではない。虚偽も。うそつきは信じられない。当たり前だ。
隠ぺいを“暴露”し、それを攻撃するメディア。そのメディアに対しても、「本当のことを伝えててない」と市民は感じている。不信が渦巻いている。
そして、国や行政の言うことは信じられないとなる。
特に問題なのが放射性物質の測定値をめぐる問題。民は“自衛”に走る。食品は買わねばならない。スーパーの店頭に、それぞれの食品に貼られた「測定値」を見て買うか買わないか判断する。半信半疑で。
なぜこれほどまでに「不信」が広まったのか。信という字が不毛になったのか。
ある学者さんが上手い事を言っていた。
「国が国民を信じていないからですよ」と。
情報を公開すれば国をあげてパニックになる。政府や官僚が言い続けて来た論理。そこには“愚民思想”があったのだ。
だから、例えば論語にある「寄らしむべし、知らしむべからず」を「知らせてはいけない」と読み解くのがこの人たち。孔子さまがそんなこと言うわけない。
「知らしむべからず」とは「知らせるのは、わかってもらうのはむずかしい」と読み解くのだ。
セシュウム米騒動で揺れた二本松市。その二本松市にある霞ケ城。おっと、なんと霞だよ。霞が関ではないけれど。
その城の門扉にある“戒石銘”。
藩主の丹羽高寛公が儒学者岩井田昨非に作らせた藩士への戒め。
「なんじの俸(ほう)、なんじの禄(ろく)は 民(たみ)の膏(こう)、民の脂(し)なり 下民(かみん)は虐(しいた)げ易(やす)きも 上天(じょうてん)は欺(あざむ)き難(がた)し」
つまりー。
「お前の俸禄(給料)は、民の汗と脂の結晶である。 下々の民は虐げ易いけれども、天を欺くことはできない。」ということか。
しかし、ここにもある。下々の民は虐げやすいと。官に根付いた思想。
国民は国を信用できない。信じられないという。国は国民を信じていない。
信頼関係ゼロの国。そりゃ不信の連鎖が連鎖を生むでしょうね。じゃ、信じられるのは自分だけ。そうもいかない。自信すら失われてしまっているような。
2011年10月25日火曜日
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