日本を取り巻く外交・防衛の多くが、いわゆる「棚上げ」で処理されてきた。
その当時はそれが最上の策であり、賢明な選択だとだれしもが思ったのだが。
そのツケが、利息をともなって回ってきているということ。
日本と韓国の戦後は、昭和40年の日韓基本条約締結をもって関係が正常化された。いわゆる李ラインも無くなった。領土をめぐる問題。竹島。棚上げされた。そこに至るまでにあったもの。「解決せざるをもって、解決したとみなす」。条約締結に至るまでの日韓交渉時の密約。
尖閣。1972年、昭和47年の国交正常化交渉。田中・周恩来会談。
周恩来は言ったという。「尖閣につぃては今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ台湾も米国も問題にはしない」。田中はそれで折れたという。
沖縄返還交渉時、アメリカは尖閣の問題を避けた。冷戦時。アメリカには日本も台湾も必要。中国とも対立したくない。正常化が視野に入っていたから。
「沖縄は日本に実質的に返還しつつも、尖閣の領有権には踏み込まない」。それが“懸命な策」。未だ持ってアメリカは言う。「領有権については特定の立場をとらない」と。
1973年の田中・ブレジネフ会談。「戦後未解決の問題」という指摘で終わった。それでも当時は上々出来だとされた。北方領土は日ソ平和条約締結時に解決する問題として。
沖縄の米軍基地。普天間の辺野古移転。鳩山のあまりに稚拙で無能な外交や判断が普天間固定につながり、その場しのぎの言葉が、それから2年後の普天間へのオスプレイ配備になってくる。
その日に起きたこと、その場にあることを、その場で解決しない。出来ない。
先送りが日本外交の得意手だったのか。
原発問題。再稼働含め、その多くに対する方針は、棚上げされる気配が濃厚だ。
政治家はその方向についてのらりくらり。明言をしない。
福島の処理。それもなんとなく棚上げ、放置というような、先送りといったような萌芽が見え始めている・・・。
当面を糊塗する、それが最良の策といわんばかりに。
「まあまあまあ、この話はそれくらいにしておいて・・・」。お茶で一服、トイレに行って水に流し・・・。それも日常会話の中の光景。
「棚上げ」。人類が生み出した一つの知恵。それは政治の世界にあっても、隣人関係にあっても。
しかし、その「知恵」が時として災いをもたらす。棚上げにしなかったら、次のステップには進めなかった事も数々ある。
しかしー。上げたものは、いつの日か誰かが下さなければならない。
沖縄の米軍基地問題。もはや袋小路のドン詰まり。解決策を誰が見いだせるのか。誰もいない・・・。
日米安保条約。それは敗戦が背負った、ある意味日本にとっての「毒薬」。しかし「良薬」とて口に苦しとも言う。
安保条約。その解釈によって運用されているこの国にとっての唯一の「砦」。
ならば、置かれた環境の中での次善の策を探るしかない。
福島。安保よりも難しい。3・11前にはどうやっても、誰を持ってしても戻せない。置かれた環境の中で、県民の模索は続いている。
次善の策を県民は、町や村は考える。それを阻害しているのは・・・。国の統治機構。既成の法律に基ずくあらゆる規制。
臭いものに蓋の棚上げ。福島の棚上げは「知恵」なのか。「東京」にとっては最良の知恵なのだろう。
歴史は繰り返されている・・・。結局何も変わっていない・・・。「あいまいさ」がそれに加担して。