ips細胞の研究で京大の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞。昨夜のテレビ、きょうの新聞。その報道ぶりは、それはそれは、もう凄いの一語。
毎年、ノーベル賞の時期になると大手マスコミは「ノーベル賞班」を作る。各賞の受賞が予想される人を洗い出し、いわゆる予定稿を書いておく。
その予定稿、事前に書かれていた原稿がガサっと紙面を埋める。とてもじゃないが読み切れないくらいの量。
ふと思ってしまう。日本人て「賞」が好きなんだなと。諸外国でもそうかもしれないが。
生存者叙勲も然り、各種の褒賞も然り。それらの晴れがましい祝賀会に何回呼ばれて出席したことか。
そう言えばあったな。戦争中の“金鵄勲章”ってのも。
山中教授の受賞理由、研究成果。一言でいえば“難病治療”に役立つとか。確かに朗報。
その研究成果を元にして、カネ儲けをはかろうとする製薬会社が、きっとしのぎを削るんだろうな。
山中教授が「マスコミの寵児」に成らなければいいがな。マスコミがもてはやすのはいっときのことだから。
1949年、まだ日本が敗戦の傷が癒えていない時、湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞は、日本人として初のノーベル賞は、その研究内容、素粒子の理論はわからないまでも、日本人の士気を鼓舞したことは間違いない。
下種な物言いかもしれないが、「英雄」だった。
それ以来、今度は19人目の受賞。
湯川博士の研究成果は、その後原子力発電に“利用”された。湯川は正力松太郎の乞われて原子力委員会の委員に名を連ねていた時があった。湯川は正力らが言う原子力技術の「輸入」に反対する。「アメリカから技術輸入の過度に依存することは日本の技術の自主性を損なう。軍事転用も可能にする巨大原子力の導入には警戒すべきだ」として。原子力委員会の委員を辞任する。
国の方針と科学者の良心、研究結果は必ずしも相入れない。
湯川は輸入技術への過度の依存を危惧したが、その危惧は現実のものとして、福島で体現された。
ips細胞と国の医療政策。どんなマッチングをしてどんな展開をみせるのだろうか。
佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞した時はびっくりした。驚いた。「非核三原則」を評価されてのことだというが、当時の国民には懐疑的な見方をする人も多かったと記憶している。非核三原則が“形骸化”しているのではないかとの危惧があったから。
あの時の佐藤栄作さんの晴れがましい笑顔は今でも覚えているけれど。
きょうもノーベル賞の物理学賞の発表があるらしい。明日もあるらしい。さて日本人の誰が候補と目され、受賞の可能性があるのかどうか。門外漢の亭主にはわからない。
唯一、文学賞を村上春樹が取らないかなと密かに期待している。村上文学は、川端康成とは全く違う作風なれど、今の時代を語る文学ではないかと思っているから。
かつてノーベル文学賞を受賞した作家に、ガルシア・マルケスという人がいた。南米コロンビアの作家。彼の代表作は「百年の孤独」。とんでもない長編だが。
「百年の孤独」と名付けられた焼酎がある。いわばレアもの。皇太子が英国留学中に好んで飲んだ40度の焼酎。この蔵元は、小説の題名から銘柄名を取ったはず。
村上春樹が、もし受賞したら、仕舞ってある百年の孤独の栓を切り、乾杯してみたい。それは決して「安酒」ではないけど。一時プレミアがついて、東京の渋谷では1本三万の値がついていた記憶があるのだが・・・。