2012年10月6日土曜日

大滝秀治さんが亡くなって・・・。

俳優の大滝秀治さんが亡くなっていた。伝えられた訃報に驚いた昨日。

巨星落つということか。また一人、味わいのある役者がいなくなったような。
「名脇役」と呼ばれていた。それを自認もしていた。

今の世の中、“脇役”がいなくなった。誰でも主役に躍り出ようとしている。身の程わきまえずに。

「昭和」に生き、「昭和」を演じきってきた役者さんだったと思う。

だからこそか。昭和は遠くなりにけりとも思える。一つの時代が確実に終わっているような気がする。

いかんともし難き天命・・・。

たまたま過日、高倉健主演の映画「あなたへ」のメイキング番組を見た。撮影は去年だったはず。
亡き妻の遺言により、妻の故郷である長崎を訪ね、その町で、過去の妻のありようをしり、船で海に散骨する・・・。

その船頭役が大滝秀治。撮り直しをしない高倉健がそのシーンでは撮り直しを監督に頼んだという。
散骨を終えて港に帰ってきたシーン。お礼の金袋を差し出すと、大滝が言う。息子に向かってだったか。「お~い、油代だけ貰っておけ」。
間を置いて言う。「ひさしぶりにきれいな海ば見た」。去っていく大滝を見ながら高倉は自然に泣いていたシーン。

高倉は後日、インタビューに対してこう話している。
僕はドキッとしたよ。あのセリフの中に、監督の思いも脚本家の思いも、みんな入っているんですよね。この海は、天草の乱のころから色々なことがあった大変なところで、決して美しい海ではないと。そういう何もかもが入っているんですよ。大滝さんには分かっていらしたんだね。いい俳優さんには分かるんです。
やっぱり、察する文化っていいよ。戦後、はっきりとものを言うのがいいっていう時代があったんです。『いいことはいい』。そういうのを『格好いいなあ』と思う時代があったんだけど、今はそういう時代とは違ってきています」。
映画を見ても、テレビドラマをみても味のある役者さんだと思う。役者として、俳優として、人間として、背骨が一本通っていた人だったのではないかと。
背中で演技が出来る人だったのではないかと。
秋の故か。なぜか感傷的なのか。人は去り、人は生まれる。
3・11。1万数千人の人の命が奪われた。そして、3・11、あの地震の揺れの中で、恐怖の中で被災地でも多くの命が誕生していた。
今年の3月11日のこのブログにも書いた。満1歳の誕生日を迎えた瀬川虎ちゃんという子のことを。元気に1歳の誕生日を迎えていた。
3・11後に見た一枚の写真。穏やかで静かな海に呆然として立ち尽くしている老人の姿。やるせなかった。
今年―。「やはり俺らは海の男だっちゃ」。舟を沖合に出す老いた漁師の映像。気骨と逞しさをみた。
大滝秀治さん、87歳だったという。「丈夫は棺を覆いて事定まる」という。歳をとればとるほど人間の味わいが出てくるという。
なぜか大滝秀治という人に憧れる・・・。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...