久しぶりの秋晴れです。隣の田んぼの稲穂も気持ちよさそうに揺れています。
きのう見かけました。近所にあった田んぼ一枚。重機で掘り起こされていました。感傷的なことですが、その田んぼの北側は富岡町から避難してきている人たちの「借り上げ住宅」4軒。
田んぼを見ながら、置いてきた故郷の光景を重ね合わせていたのかもしれませんが。
今朝、町内会の人に聞くと、その田んぼの持ち主の「おやじさん」が亡くなったとか。たぶん「宅地」にされるんだろうという話でした。
我が家の界隈。30年前までは民家は3軒。あとは田んぼだったそうです。我が家も元農地だったそうです。
身の回りを見ても、明らかに稲作農家は減少しているようです。残っている農家もすべて「兼業農家」。コメをつくっているだけでは食っていけないってこと。
国が生産者米価を決めていたときはいざしらず、今は、ほとんどが「農協」の買い上げです。収穫日は農協が決め、「ハタ」が立てられていました。
今年、2014年、またまた農協が農家からコメを買い取る価格が下がったそうです。去年よりも一割減。
コメ1俵、60キロ。買い取り価格は1万円前後です。60キロ。だいたい1年間に消費される、一人が1年間に食べる量です。
都会のスーパーでは新米コシヒカリが5キロ。1,800円前後で販売されているそうです。安くなりました。消費者にとっては「ありがたい」こと。
でも、コメ農家にとっては死活問題でもあるのです。
福島県の「農協」が決めた今年のコメの買い取り単価。去年より全銘柄約2~4割の減。
コメの需要減と過剰在庫によるコメ余り、東日本の豊作予想を考慮し、主力品種「コシヒカリ」(1等米60キロ当たり)は会津を除いて軒並み1万円を大きく割り込む厳しい単価設定となった。と地元紙は書いています。
600キロ作っても10万円。経費差し引けばいくら手元に残るのか。5万円にも満たないはず。
コメの需要減とはコメ離れということです。食卓からコメが消え続けている。
“異常気象”はあったものの、作柄はおおむね上々。でも価格は下がる。
日本の農政の基本的な問題です。
「食に関心のある人はエネルギーにも関心がある。エネルギーに関心がある人は食にも関心がある。なぜなら双方とも”生きる“ということに結びついているから」。
農政が抱える問題は多様です。農家の高齢化の問題もある。地方の若者の、農業離れ、都会への移住の問題もある・・・。
都会のスーパーに行けばあらゆる食べ物が並んでいます。日本の食糧自給率は39%に落ち込んでいるのに、見た目ではそれを感じ取れない。
コメを作っても生活費にすらならない。そんな生産者の悩みは、スーパーでは感じ取れないのです。
仮に離農がどんどん進めばどうなる。農業国中国からの輸入なんて事態にもなりかねない。
緑溢れる田園風景も姿を消す。
そうならないとも限らないのです。
今、日本にとって一番大事な安全保障。それは「食の安全保障」なのです。さまざまな観点から見て。
食と農、農とコメ。第一次産業である農。
なんでも「政治」を絡めたくはないのですが、国会議員の大半は地方選出です。
農家は票田でもありました。
選挙区へ帰ることを「田の草取りに行く」「票田を耕す」という言い方も“永田町業界用語”としてありました。
でも「食の安全保障」の論議は、「別の安全保障」の論議に隠れてしまっている。
収入にならないと嘆く生産者。価格が安くなったからと言って安堵する消費者。
原発問題と同じ構図です。電気を生産するところ、電気を消費するだけのところ。
食の安全を旨として福島県産米を忌避する人・・・。
隣の稲穂が秋を喜んでいるのか、悲しんでいるのか、垂れている頭が問いかけてくるものは・・・。
秋とて悩ましいのです。
2014年9月14日日曜日
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