2014年9月19日金曜日
「土地と日本人」
「人間の基盤の基盤である土地が投機の対象にされるという奇現象が起こった。大地についての不安は、結局は人間をして、自分が属する社会に、安んじて身を託していけないという基本的不安につながり、私どもの精神の重要な部分を荒廃させた」。
司馬遼太郎が対談集、「土地と日本人」の中で語っている言葉だ。
時は日本列島改造論で地価が高騰し、日本中が沸いていたころ・・・。
もちろん、今は土地は投機の対象にはなっていない。アベノミクスがどうであろうと。
しかし、土地の価格は社会を見る一つの指標になる。価格の推移が世相を映し出す。
国土交通省が発表した今年の基準地価。三大都市圏の住宅地は6年ぶりに前年より上昇、商業地は2年連続で上がっているという。
「個人や企業が不動産を購入する動きが広がっている」と新聞は書く。
マンションの建設用地、商業施設、企業の事務所拡大。土地の価格の動向は、「都市圏への人口集中」を伺わせる。
少子高齢化時代という。人口問題は深刻だという。その中にあっての都市への人口の移動。地方にとってはそれも大問題なのだが。
福島県内では19年ぶりの地価上昇だと言う。なぜか。原発事故の避難者が、帰還を諦め、いわき市や郡山市などで住宅地を買っているからだ。
それとても、毎年のように下落してきた地方の地価。「上昇」という言葉が放つ印象とは程遠い。
我が家の土地は、40坪あまり。買った時はたぶん目の子坪20万くらいだったという記憶。今は15万にもならないという。
宅地の需要がある。それは農地の宅地転用へとつながる。
人口の増加とコメ農家の減少。土地の基盤は農家が作ってきたと言っても過言ではないのに。
地方の大方は地価は上がらないと「専門家」は言う。高齢者にとってマイカーが不可欠な田舎。自治体が主導して、中心市街地の活用を進めるべきだと言う。
中心部の再開発が、機能を集約した街づくりが地価を上げる方法だとも言う。
平成の日本列島改造ということにならないのか。
「地価上昇」。その表現は、何やら景気の明るささえも言っているように見える。
まだ、こっちは「災後」だ。
津波被害にあった地域。最大の課題は高台移転。すでにして言われていたことだが、高台移転は進まない。移転候補地だったところはすでにして、“投機”の対象にされていた。買い占められていた。
場所によっては市の中心部からかなり離れた場所でも、17%も上昇しているとされる。
中心部はすでにして地価高騰。予算の合わない買い手は離れた場所にでも住宅地を求める。
土地の取引。民間の自由裁量、需給のバランスの問題と片付けてしまうのには違和感もある。
この発表を機に、いや、すでにしてそうであったろうが、土地への投機マネーの動きが加速するだろう。
福島では宅地は19年ぶりにプラスとなった。逆に商業地は22年連続のマイナス。
土地の価格から、この国の姿、この国の形が見えてくる。
この基準地価。例えば、中間貯蔵施設建設の為に土地を手放す人へ、どう「反映」されるのだろう。
東電は「補償」の範囲を拡大した。それに反映されるのか。無いだろう。
すでにして「荒廃」している日本人の精神構造。それへの影響はいかなることになるのか。
半日考えてみたが、「ワカラナイ」に着地する。
「日本人と土地」。価格だけではなく多様なアプローチをしなくてはならない問題かとも。
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