何も経済学、財政学を語ろうとするものではないが。
先だって甘利大臣なるものが、原発再稼働に触れ、高額な化石燃料の輸入に頼って発電所を稼働させ、電力需要をまかなっているのは「国富の流出だ」というようなことを言っていた。
小渕優子も同様なことを言っている。持論というよりも、誰かに教え込まれたセリフだと思うが。
国富とは何か。なにもアダムスミスの国富論を演繹するつもりは無いし、神の見えざる手を語るものでもない。
原発と国富。
化石燃料の輸入と原発にかかわるあらゆるコスト。きちんと比較できるものは無い。比較できる人はいない。
原発を再稼働しなければ、化石燃料や石油の輸入で、関係企業が多額の出費を強いられる。結果、電力料金の値上げにつながる。家計に響く。
それをもってして「国富の流出」という論を展開しているような感じだ。
「平場(笑)」で物を考える。
国富とは国民全体が豊かになるということだ。
今この国は一握りの金持ちと収益を向上させている大企業によって成り立っているような「空気」が作られている。豊かでない人の方が圧倒的に多いというのに。
身近な話、円安・株高。円安になれば燃料の輸入金額は上がる。株高になれば企業収益は向上する。
収益が向上した企業が、その儲けをどれだけ従業員に還元しているのか。
していない。
輸入品は上がる。原材料の価格も上がる。円安でだ。
日銀は金融緩和を言い、市場にじゃぶじゃぶと金をまき散らす。それが何を招いているのか。
アベノミクスなるものは、その初手から失敗しているはず。
国富をいうなら、国の借金のことも語るべきだ。政治家は黙して語らない。
1千兆円を超す国の借金。国債を言う名で市場で売り買いされるもの。
償還期限が来たとき、いや、それは払っているだろうが、また新たに国債を発行するといったいたちごっこ。
企業の株主総会で、大株主の発言権が強いように、日本の国債を多額に保有している国の発言権も強いはずだ。国内でも、引き受けシンジケートという金融機関の力は増す一方だ。
1千兆円という借金は国富の流失にならないのか。
メディアはすぐ国民一人当たりいくらの借金と言う。
借金を返せなければ、昔風に言えば「夜逃げ」ものなのだ。いまは「世逃げ」なのか。
火力発電所と原子力発電所。その比較は美味しい数字だけで語られる。単なるコスト計算で。
福島第一発電所の事故で、どれだけの国富が流出しているのか。すでにして兆を超える数字のはず。
アレバやキュリオンにどれだけの金を払ったのだ。だれも言わない。
事故のあった福島原発のことだけでは無い。核のゴミの持って行き場の無いということ。それに将来どれだけの国富が費やされるのか。
原発避難民。多くが非生産人口の高齢者だとされる。そうではあるまい。働き盛りの人たちだって、その能力を遺憾なく発揮出来る環境ではなくなった。
将来のこの国を背負う子供たちは国富の対象とされていないような。
「復興」の名のもとに多額の補助金、交付金が税金の中から出される。それらが国富の為の再生産につながっていくのか。
払えば終わりだ。
まともに働く人のエネルギーが失われていく。
もし、どこかでもう一回原発事故が起きれば・・・。この国は破たんするはずだ。単に安全性の論議だけの問題ではない。
格差の問題、貧困の問題。すべての国民が豊かであるという「国富論」とはほど遠い。原発で国富と語るというの愚かさと思うのだが。
2014年9月21日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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