塾生の一人からメールを貰いました。原稿への感想です。坂本九の歌「上を向いて歩こう」を例にして書いた一文を含めての感想。
上へ上へと顔を向け続けていれば、足元がふらつきます。『上を向いて歩こう』は、きっといいことばっかりじゃないから時には、上を向いて…ってことではないかと私は解釈しています。今、子どもたちの詩に空の題材が多く代わりに土の題材は減っています。過度な上昇志向が、かえって精神のバランスを崩してしまってはいないか、空、が空虚さにつながってはいないか、根っこの部分にもっと目を向けなければいけないのではないか、と自問自答しています。
そのまま引用させてもらいました。子供の詩、空・・・。金子みすゞの詩を思い出しました。
土
こっつん こっつん 打(ぶ)たれる土は
よい畠になって よい麦 生むよ
朝から晩まで 踏まれる土は
よい路になって 車を通すよ
打たれぬ土は 踏まれぬ土は
要らない土か
いえいえそれは 名の無い草のお宿をするよ
土、土、土・・・。今、福島県では土はすなわち「汚染土」と見られがちです。
除染の名のもとに、表土を剥ぐとか、表とその下を入れ替えるとか。
「土着」。それは故郷論の原点です。塾生のメールではありませんが、「足元」なのです。
それが完全に揺らいでしまっている今の福島県。土が無いと作物が作れない農家・・・。
打たれる。その言葉はコンクリートのことになってしまった。
町内会恒例の「掘り払い」。どぶ掃除。毎年今頃の恒例行事でした。今年は中止。側溝清掃で出た土を処分出来ないからということらしい。
そして近所の農地。所有者からその土地を借りたという“悪徳業者”が、どっかから運んできた土をダンプでもってきて積む。
行政や警察に言ってもほとんど効き目なし。見て見ぬふりか怠慢か。まったくの及び腰。
あの一反歩の農地は元に戻ることはないのかどうか。
別の田圃では、天気がいい日、土が畝されています。やがて田植えが行われるでしょう。稲が蒔かれ、育っていくとあたりの光景は一変します。
空からのおひさまの恵みを受け、雨の恵みを受け取って、土は豊かになり、人々の糧を生む。草のお宿どころではないのかも。
あの難解だった長塚節(たかし)の小説「土」。中学の時に手にしたけど、難しかった。農民文学の最高峰と言われている「土」。読みなおす気力はないかもしれないが。
子供の詩に土が登場するのを心待ちにしています。せめて室内の御砂場で遊んで、幼稚園の砂場で遊んで、人生に必要な知恵をすべて学んで欲しいと。お砂場から詩を紡いで欲しいものと。
“チェルノブイリ”異聞
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