比較的以前から言われていて、今、また新たに言われ始めた言葉の一つに「メディアリテラシー・情報リテラシー」というのがある。
リテラシーとは、例えば広辞苑にはこうある。「読み書きの能力。識字。転じて、ある分野に関する知識・能力」と。
この言葉を「情報・メディア」を対象に持ち出した、言い出したのが誰だかは覚えていないが、20世紀の後半、21世紀になる前くらいだったか。よく使われ始めたのは。
だから“業界”では、なんとなく知っている言葉だし、それなりのイメージはあろうはずだが、普通の市民がどれくらいこの言葉を知っていて、理解しているのだろうか。
はなはだ疑問なのです。
一昨年の塾で、この話をしました。リテラシーという言葉を知っているか。それが最初の問いかけ。半数以上の塾生ですら知りませんでした。はじめて聞く言葉だと言っていました。
反対に、そのことに凄く興味を持っていて、しかしその本質がわからなかったという塾生もいました。
3・11以来、時々、情報の話をします。情報リテラシーの話をします。なぜか。あまりにも虚実取り混ぜになった情報が吐き出され、みな“混乱”していると思えたからです。
「リテラシーとは辞書にはこう書いてあるが、要するにどう接するかということだ。役に立つ、役にたたない、間違っている、正しい・・・。それらを含めてどうやって取り入れていくかということだ。どうすればいいか。まず接した情報を鵜呑みにせず、まず疑え」。
疑うということが、最良のリテラシーなんだと。
これからも塾生と一緒にこの問題を考えていくつもりです。折りにふれて。だって我々は好むと好まざるにかかわらず「情報化社会」という伏魔殿に迷い込んでしまっているのだから。
本筋から逸れるようでそうでもない例をちょっと。
「なんと!高得点をたたき出しました」。アナウンサー絶叫。テレビのフィギアスケート中継。
「たたき出す」って、表にたたき出すぞっていうような怒った時の言葉でしょ。まして氷の上を叩いたわけでもないし。フィギアスケートの華麗さに似合わないし。
「閑静な住宅街で事件がおきました」。閑静って文字通りのどかで静かなとこでしょ。一歩間違えば人がいない街ともとれるし。その街が閑静かどうかは、それぞれの人の感性が決めること。
まして、映像付きなんだから、形容詞つけなくてもどう見るかは視聴者の見方。
なんでもいいから、住宅街には「閑静」と付ければいいという勝手な思い込み、とうか、常套句。
「しめやかに葬儀が営まれました」。しめやかでない葬儀なんて無い。
原因は警察で詳しく捜査しています。はい、捜査するのが当たり前。捜査しなけrばニュースなんだが。決まり文句ってやつ。
ここ数日のテレビで鼻白んだ数例。テレビ言語の“劣化”は変わりないのです。
新聞とて同じ。例えば、食品安全基準。国は100㏃と決めた。スーパーなどはもっと低い基準にしたいと動いている。国は、それでは困ると待ったをかけようとする。そんな動きがある中で。「消費者の中からは国の方針に反発が予想される」と。反発は予想するものなのかい。記者が勝手に反発してる、したいってことじゃないのか。
ま、これの当否は言わないけど。内容の。「消費者」におびえて、なんでもかんでもの規制値強化・・・と。
言葉と言えば、最近、いや以前からもそうだったけど、ツイッターという中に満ち溢れているおかしな言葉や不快な言葉の数々。しかも相変わらず多い、誤解、偏見、デマ・・・。
やがてネットが言葉を、日本語を滅ぼすってことになりはしないかとの危惧。
その前に、新聞、テレビ、言葉の劣化を無くして欲しいな。そして、それ以前の「誤報」や「思い込み記事」も。
言葉以外でも。相変わらずの「被害者家族」のインタビュー。顔まで出して。それになんの意味があるのか。「加害者家族」へも。それへのニュース価値は無いものと。
もはや慣例としか思えない取材方法。なんでもかんでも撮りまくり、聞きまくりが報道とは思えないんだけど。それが、同じような事案の再発防止に役立つとも思えないし。
“あらさがし”するために見ているわけじゃないんだけどついつい気になる。
どうもこのリテラシーというあまりにも概念的な話は、まだまだ続けたくなってきました。いろんな角度から。結論はすでに用意してあるのですが。
2012年4月25日水曜日
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