2013年8月16日金曜日

「おことば」と「式辞」への感想

8月15日、どう言おうと、この日は日本人にとって「特別な日」なのだ。一年で一番大事な日なのだ、と思う。

終戦記念日と呼ぶ人もいる、敗戦記念日と呼ぶ人もいる。どちらにしてもこの日68年前に発せられた昭和天皇の終戦の詔書が、戦争に終わりを告げた。

敗戦は、もっと前から続いていた。詔勅が発せられて故をもってこの日は「戦没者を追悼し、平和を祈念する日」とされた。

戦争に対する今の天皇の真意はもちろんわからない。しかし、歴史の証言を見ても、昭和天皇が、早い戦争の終結を望んでいたのは間違いない。
そのことを平成天皇もご存じのはずだ。

多くの兵士が、「天皇陛下万歳」と言って散っていった。それは昭和天皇も知っていたはず。だからだろうか、敢えてマッカーサーに対して、自らに責任があると申し出た。天皇に戦争責任を負わせなかったのは、マッカーサーの判断によるところが大きい。その陰では白洲次郎の働きかけがあったはず。

白洲次郎の説く「武士道」、彼をもってしていわしめるプリンシパル。それがマッカーサーに伝わったのかとも思う。

昨日の追悼式での天皇陛下のお言葉。
「苦難に満ちた往時をしのぶとき、感慨はいまなお尽きることはありません。
ここに歴史を顧み、戦争の災禍が再び繰り返されないことを切に願い、全国民とともに、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」。

毎年同じような文面だが、今年はその「おことば」の持つ意味合いが違う。
「戦争の災禍が再び繰り返されないことを祈る」。そう陛下による“不戦の誓い”と受け取る。

驚いた。昨日のNHKのニュース。どこにもこのくだりはない。生の声で伝えられているのは、全国民とともに・・・以下のくだりだけ。
NHKニュースの中に恣意的な報道の片りんを見る。

昭和天皇の詔勅を録音し、その録音盤を必死で守り、ラジオ放送にこぎつけたのもNHK。全文が放送された。

68年後、そのNHKは短いお言葉をすら“編集”して、その“真意”を伝えようとしないような。

NHK。ニュースと番組の間には、局内でも相当の葛藤や確執があるのではないか。もっとも恣意的な番組もあるが。戦争をめぐっての内部矛盾を抱えているNHK。一つの感想。

安部首相の式辞。NHKもそうだった、新聞にも見出しが躍る。
「加害責任・不戦の誓い盛らず」「国内に主眼」などなど。

この日は靖国の日でもある。8月15日、日本の首相が何をして、何を話すかに世界中の視線が耳目が注がれる。

式辞は安部が「一から書き直せ」と指示して出来上がったものだと言う。歴代首相が述べ、安部自身もかつて触れていた“加害責任”“反省”。その根底にあるものは・・・。

改憲への道だ。アジアに対する責任に触れなかったことに中国、韓国は反発してくる。過激な言辞を使うかもしれない。それを見越して、待っているのだ。
高等戦略だ。あえて仕掛けている。

彼らが反発し、攻撃的言辞を弄すればしめたもの。日本を攻撃してくるかもしれない。そんな雰囲気を醸成できれば、軍事力増強、自衛隊を国防軍に。第9条を無くさないとこの国は守れない。そんなロジックに持っていける。

“敵”もさるもの。その手には乗らない。今のところ中国も韓国も「非難」を手控えているような。安部の胸中を見越したかのように。二つ目の感想。

国会議員を含め、自民党の人たちが、いや、一部野党もそうだが、なぜ「改憲」を言うのか。いまだもってボクには理解出来ない。
改憲論は今に始まったことではなく、ぞっと以前から公然と言われていたことではあったのだが。自主憲法制定は。

天皇陛下が“不戦の誓い”を述べられたのに、首相は敢えてそれを無視するかのような。英霊の御霊に呼びかけ、尊崇の念を表すことに腐心するのか。

天皇陛下万歳と言って散った兵士は、時の首相万歳とは一言も言っていない。母親に対しての先立つ不孝をとは言ったが。

改憲を目指すがゆえに、暴論だが、英霊を出汁にしているようにも思えてくる。

静謐の場であるべき靖国の杜。それが騒擾の場となっていた。

「それでも日本人は安部を首相に選んだ」。


福島県双葉郡、なぜかそこから出征した兵士は多かったという。我慢強さがかわれたからだとも言う。出征した兵士たちの故郷は、御霊の帰る場所は、いま“原発戦争”の真っただ中にある・・・。

“チェルノブイリ”異聞

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