2013年8月18日日曜日

「英霊」と「亡霊」と「幽霊」と。

しばらく前、永田町の首相公邸で“幽霊論議”に話がはずんでいたという。
安部はなぜ公邸に住まないのかということで。
自民党幹部を公邸に招いて会食した際、誰言うともなく公邸には幽霊が出ると言う話になったとか。出席者の一人がその話を披露している。「公邸に住まないのは幽霊がいるからなんですよ。嫌なんです」と安部が答えたとか。そして歴代首相の逸話が披露され、公邸や一夜幽霊談議に話の花が咲いたとか。

公邸に引っ越さない理由としての幽霊。国会でも論議となった。政府は答弁書を作り、「承知していない」と答え、安部はテレビで「都市伝説にすぎない」と一蹴した。というが。

真夏の幽霊話。それを怪談というなら、それは涼しくなるという意味で、肝を冷やすという意味で、伝承文化とも言える。夏にお化け、それは付き物だった。

子供の頃の遊び。肝試し。墓地やお化け屋敷と称されるところに行った。少なくともお化けとか幽霊に出合ったことが残念ながらなかった。

首相公邸。ちょっと前までは首相官邸。当時は官邸の裏側に、今の官邸があるところに公邸があった。

旧官邸。そこの外壁には2・26事件の時“反乱軍兵士”によって撃ち込まれた弾丸の痕跡があった。2・26、5・15事件。犬養首相は暗殺されている。

軍服を着た兵士の幽霊を見た。そんなことを言っている首相夫人もいたとか。

旧官邸、そこはかつてボクの根城だった。夕方、ほとんどの人がいなくなったあとだれかいないかと部屋を回った。しんとした空気。幽霊には出会っていない。

夜遅く官邸をあとにする時、細くて暗い廊下を通って、通用口から出たこともある。幽霊には会ってない。

当時噂されていたのは、官邸の下の方、溜池に降りていったところにあるたしかどっかの役所の研究所とされていた建物。蔦に覆われていた洋館。官邸からの秘密の通路があり、いざという時の逃げ道だと言われた。今はたしかそこも官邸の一部になっているはず。

幽霊はどこに出るのか。今、柳田邦男の「遠野物語」が“復権”しているという。いわゆる超訳本も含めて。遠野物語は幽霊の話である。怪談である。
それらは皆民間伝承に基づいた土着の文化である。

遠野地方に伝わる数々の幽霊の話、怪奇現象。遠野物語には、かつて東北を襲った津波にまつわる幽霊の話もある。東北に悲劇がある。

柳田邦男と折口信夫。二人は民間伝承の物語を、土着信仰としてとらえ、先祖の霊に遡ることによって、「日本人とは・・」を学問としても追求した。

先祖の霊は山にあるのか海にあるのか。柳田による「山」論。それは、東北学の一つのアプローチ。

「3・11」によって柳田文学は復権した。柳田を通して見る東北。

靖国の杜には英霊が眠ると言われる。英霊が祀られているとされる。夜中、靖国で亡霊、幽霊と出会った人はいるのだろうか。靖国に夜中、行軍する兵士の軍靴の音が響いていたのだろうか・・・。

公邸の幽霊話。まさにそれは怪談だ。怪談といっても、怪しい話としての怪談。
戦陣に散った人を総称して英霊と呼ぶなら、そこに出る幽霊は、最高戦争指導者会議が連日行われた部屋に、無念の死を遂げた兵士が出ると言う話なら頷けないこともない。ならば、その幽霊はそこに“怨念”を持って出てくるということになる。

霊は怨霊か、生霊か。

四谷怪談というのがある。歌舞伎狂言にある東海道四谷怪談。鶴屋南北の世話物。あのお岩さんの話。伊右衛門の話。これとて「文化」である。

けだし、幽霊は、それを見える人にとっては、何か関係がある霊なのか。無関係なところにもそれは現れるのか。


夢枕でも“幽霊”に出会ってはいない僕はおかしいのか。

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