ある集まりで知りあった青年がいる。職業はスポーツトレーナーと言えばいいのか。ジムで整体をやっている。
彼はこのからから亭の常連客だと。
亭主の腰痛の事を読んで、きのうわざわざ事務所に訪ねてきてくれた。テニスボール二つと、あのスピードスケートの金メダリスト、清水宏保の「世界一の腰痛メソッド」という本を。大事なところに付箋を付けて。
「これやってみてください」。事務所の床で5分ほどのコーチ。今もそのボールは腰のところに挟んでいます。時々グリグリしながら。
昨夜家に持ち帰ったら、そのボールは、犬に、ゲンキに取り上げられてしまいました。自分のおもちゃと勘違いして。楽しそうに遊んでいて・・・。取り返したけれど。
立ち話で彼は言い始めました。からから亭を読んで、夏休みの10日間、沖縄に行ってきたと。「沖縄と福島」。数回書いたのを読んでいて。
「海にも、観光地にも行きませんでした。米軍基地をさまざま見て、戦跡を辿り、そこの空気を感じながら、いろいろ考えてきました。
夜、基地の近くの、“米軍基地撤去”、“県外移転を”というポスターを貼った店に飲みにいきました。
そこのご主人に聞きました。ポスター通りなんですねって。なぜかそのご主人は“本音”を話してくれました。「実際は米軍基地が無くなったら、商売は出来なくなる。無くなったら生活が成り立たない」と。
彼は、そのオヤジとずいぶん話をしたらしい。そして「沖縄の実相」を知る。
定着させられた米軍基地。それと“共存”せざるを得ない日常の糧を得るということ。
彼はそこで感じます。「福島」と同じ実相を。東電マネー、原発マネーで潤ってきた立地地域の人たちの、事故後の苦悩が重なることを。
そこにいかなければわからなかった沖縄の実相。それを知ることが出来た夏休み。
「貴重な体験でした。特別な夏休みでした。子供とも話し合います。沖縄のことも福島のことも。福島で生きていくことの意味がわかったような気がします」とも言っていた。
「知ることの意味って大きいですよね」とも。
自転車で職場に帰っていく彼の後姿は格好良かった。大きかった。
イデオロギーと実相は“対極”にあるかもしれない。
東電の汚染水問題。東電が重い腰をあげる。“真相”らしきことをやっと公言する。
一昨年の5月以来、今に至るまで、地下水の汚染まで含めて、海に流れ出ていた放射性物資の推定量は、ストロンチウム10兆ベクレル、セシウム20兆ベクレル、軽30兆ベクレル。
原発からは、通常運転されているところでも“汚染水”はいつも海にながされている。流されてきた。原発が出来、運転が始まったと同時に“汚染”されていた。それを知らないで能書き垂れるばかものどもよ。原発とはそういうものなのだ。
通常時でも2200億ベクレルは放出されていた。前にも何回も書いたが。
漁民たちはそれを、もちろん知っていた、そして許容していた。その数値では魚に影響はないという「知見」に基づいて、それを信じて・・・。
「真の文明は、山を壊さず、川を汚さず・・・海も・・・」。足尾銅山事件を糾弾し続けた田中正造の言葉。
彼は、それを公然と、国会の壇上で言い、糾弾することに国会議員の職を賭していたと聞いている・・・。